富山県警・県公安委員会が犯した犯罪を省みて

=逆転賠償命令5万円の重み=

逆転賠償命令5万円の重み
平成161215日、私は名古屋高裁金沢支部の傍聴席から判決を聞き漏らすまいと裁判長に注視していた。そして、5分ほど経った頃、私の耳に飛び込んで来た最初の言葉は「原判決を変更する」と言う内容であった。
一昨年、富山地方裁判所で判決が下された時の「棄却」という響きではない。だとしたら勝訴に違いない。段々と実感がこだまと成り頭の中に広がって行った。
当日、県庁の記者会見室では、記者から今回の判決で示された損害賠償金額が55万円の請求に対して5万円の認定で有った事から,完全勝訴では無いのではという質問が有った。
私は次のように答えた。
「私の場合元々賠償金額には意味が無く当初から控訴審が金沢で行われる事を予定していたので地元の松井選手にあやかり55万円と金額を背番号の数値としていた」
私にとっては控訴審判決で、県警が私のプライバシーを侵したと判決を戴いた事で十分であった。
今、このパーソンを通して皆様に最も訴えたい事は、今回の判決では触れられなかった核心部分についての事柄である。私が何故、今回の訴訟に望み、また、「謝れない県警」の出版に迄至ったかについて述べさせて頂く。
既にオンブズパーソン33号(03/3/30)の投稿欄には,同事件の経過と警察の不当な対応について掲載させていただいたが,その概要は以下の通りである。
1.警察の事故処理の遅れ(20004)
2.遅れた原因の説明と対策を求めた
3.遅れた現場検証の言い訳や何度も説明した等うその報告が公安委員会に対してあった。
4.公安委員会はうその報告を見抜けず「警察官が社長にお話した内容は・・・守秘義務違反として問責すべき事案でないと判断致しました。」と通知して来た。
 同経緯は、公安委員会までも蔑ろにした組織的な犯罪行為として私には感じられ、また、県民の一人として誰しもが容認できる範囲を超えているのでは無いかと判断し訴訟に踏み切った。
しかし1審では,弁護士をつけない本人訴訟だった為,十分な審理まで導けないまま敗訴となった。
2審では幸いにも青島先生に弁護を引き受けて頂くことが出来、排水の陣で望んだが、対する被控訴人(県)から提出された第1準備書面は、更に嘘、偽りを並び立てる戦術に出て来た。
例えば「平成13年11月2日・・控訴人は約2時間30分にわたって同一の質問を繰り返し・・。」と記述されていたが,実際には20分程度の滞在時間であり,同じ質問も繰り返してはいない。
もはや県警の組織だった醜い対応には、真実を広く公開して、控訴審の判断を正しい方向に導くしか方法が無いと考えざるを得なかった。
万が一にも敗訴する事は許されない、私の様な事例が、再びプライバシーの侵害に当らないと判断が下されたなら、警察は何のためらいもなく、警察行政に苦言を言う人々に対して容易に圧力を加えて行くだろうと考えた。
私は今回の訴訟の結果、逆に薮蛇になる事をどうしても避けたかった。その為には書籍「謝れない県警」を出版するしか方法が無いと決意した。
はたして判決は識者の多くが予想していた結果とは異なり、原審判決を覆す判断が出された。
判決では双方の主張に対して原告の主張を全面的に受け入れて頂いたと私は思う。
以下、判決文より抜粋した。
 イ.《本件情報は控訴人のプライバシーとして保護されるべき法的な権利又は利益に該当するか。》
裁判所の判断=個人の人格的な権利に基づくプライバシーの権利あるいは利益として,法的に保護するに値する権利あるいは利益に当たるものというべきである。
ロ.《本件開示行為は控訴人のプライバシーを侵害する違法な行為か否か。》
裁判所の判断=控訴人の勤務先会社の社長との関係でプライバシー性(私事性及び秘匿性)は相当に強度であるというべきである。
ハ.《被控訴人主張の違法性阻却事由の存否》
裁判所の判断=■■警察官が■■社長を訪問して本件開示行為をすることが八尾署の正当な職務行為であったということはできず,被控訴人の上記主張は採用することができない。
ニ.《以上になれば,■■警察官による本件開示行為は,控訴人のプライバシーを侵害する違法な行為に該当するものである
 そして、既に認定説示したところによれば、**警察官による本件開示行為は、公権力の行使に当たる同警察官が、八尾署長からの指示で、同署に勤務する警察官として控訴人の勤務先会社の社長を訪問して控訴人の人物調査を行うという職務の執行に密接に関連した行為であり、同警察官には本件開示行為により控訴人のプライバシーを違法に侵害したことについて少なくとも過失があったものというべきである。なお、**警察官の上記職務執行そのものは、上司に当たる八尾署長からの指示に従ってされたものであるが、同署長が、同警察官に対し、**社長を訪問した際に説明すべき事項や控訴人に関して提供すべき情報の内容について具体的に指示したことを認めるべき証拠はないから、同警察官の上記職務執行が同署長からの指示に従ってされたものであるからといって、同警察官が本件開示行為をして控訴人のプライバシーを違法に侵害したことについて過失がないということはできない。≫
 私は、ロ.の判断で示された(私事性及び秘匿性)について今回その真実をあえて明かそうと思う。
当時、私は創業株主の立場で会社の総資産(会社の非上場株価の値)について売方と買方の立場に立って社長と見解を異にし、確執していた最中にもたらされた違法な行為であった。そして、結果として現在退職している事が何よりも如実に示している。また、公安委員会が私に通知した「貴方にご迷惑が掛らないように十分留意したうえで・・」などの言い回しは詭弁としか言いようが無く、強い憤りを禁じえない。
しかし、私の退職に至った原因が全て同警察官の違法行為にあると迄は言い切る事も出来ない。
私にも不徳の致すところが多々有る。損害額などは誰にも推し量れない事だと思い、当初からこれらの損害金額については一切触れていない。
次に、ニ.の判断には少なからず疑念を抱かざるを得ない。組織の中で命令に従った行為に対して、具体的な証拠が無いからと言って指示をした八尾署長に何のお咎めも無く、指示に従った警察官のみが違法行為執行者として烙印を押す事にトカゲのシッポ切りの感が否定出来ない。
また、公安委員会は尽く県警の言い分を追認して来たが、今回の判決が出たからには誤りについて何らかの表明が有って当然だと思う。
最後に、出版に際して多くの方々にご協力を頂きました事に深く感謝を申し上げたい。序文では長野県の河野公安委員さん、第2部の呉西篇では高岡市の坂木さん ( 警察はそんなにエライのか )、そして終章の訴訟の行方については青島先生から率直で現実的な見方を寄稿して頂いた。
また、短期間に編集し、校正を頂きました桂書房の勝山社長さんにも支えられたことが追い風ともなり、今回の逆転勝訴に導いた大きな要因だったと思う。
 皆様、本当に有難う御座いました。
 現在「謝れない県警」は、県下のほとんどの公的な図書館や県外の図書館でも蔵書して頂く所が増えて来ている。
書籍の裏表紙に書いたとおり、「おかしい警察、おかしい公安委員会」の現状から、本来県民が期待し、待ち望んでいるような組織に変貌させて行くために、これからも粘り強く監視や提言を行って行きたいと思っている。
今後とも皆様からのより一層のご支援を、宜しく御願い致します。
最後にもう一言、『未だに事故処理の遅れについて一切の説明を受けていないのですから・・・。』
詳細な記録は下のHPにて公開しておりますので何時でもお立ち寄り下さい。
                                                   
  以上  
平成17年1月
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市民オンブズ富山の会報へ投稿、掲載いただいた文書です。
謝れない県警 著者  松永定夫